第一級陸上無線技術士(通称、一陸技)と電気通信主任技術者(伝送交換、線路)については、お互い試験科目の免除があります。
私は2024年に一級陸上無線技術士と電気通信主任技術者(伝送交換、線路)を受験し、一発合格しています。その際の記事についてはこちらをご覧ください。
今回は両資格を実際に受験した際の経験も踏まえ、解説していきたいと思います。
結論から述べると、電気通信主任技術者に合格後に一級陸上無線技術士を受験することをおすすめします。
その理由について、以降で説明していきますのでぜひご覧下さい。
試験の概要
各資格について
一級陸上無線技術士とは
公益法人 日本無線協会では、「放送局、電気通信業務用等の固定局、無線測位局等すべての無線局の無線設備の技術的な操作を行うことができる」と定義されています。
電波法では無線設備の操作を「無線設備の技術操作」と「無線設備の通信操作」に分けられます。
無線設備の技術的操作は通信が能率的にかつ確実に行われるよう設備を調整、付随する操作が該当します。いわゆる、保守の部分に該当します。
一陸技は、この「無線設備の技術的操作」の全般を行うことができるようになります。
つまり、「無線設備の技術的操作」の分野において最高峰の資格といえます。
逆に「無線設備の通信操作」の最高峰の資格といえば、「第一級総合無線通信士(通称、一操通)」と呼ばれる資格です。(これは将来的に合格したい資格です)
電気通信主任技術者とは
電気通信ネットワークの工事、維持及び運用の監督を行うことができるようになる資格です。
(詳しくはこちらをご覧ください。)
電気通信事業法に基づき、一定規模以上であれば、電気通信主任技術者の選任が必要となる、いわゆる「業務独占資格」に該当し、更に言えば「電気通信系の国家資格の最高峰」とも言われるものになります。
各試験の科目数及び試験時間
一級陸上無線技術士
試験は年1回で2日に渡り行われ、各科目の試験時間は以下の通りです。
科目名 | 試験時間 | 実施日 |
無線工学の基礎 | 150分 | 1日目 |
無線工学A | 150分 | 2日目 |
無線工学B | 150分 | 2日目 |
法規 | 120分 | 1日目 |
2日間に渡るため、とてもハードな試験になります。
電気通信主任技術者
試験は年2回で1日のみであり、各科目の試験時間は以下の通りです。
科目名 | 試験時間 |
電気通信システム | 80分 |
伝送交換設備(または線路設備)及び設備管理 | 150分 |
法規 | 80分 |
どっちを先に受験する?
科目免除を駆使し効率的に資格取得をすると考えた場合、一級陸上無線技術士と電気通信主任技術者のどちらを先に受験するべきか、私の経験を踏まえて理由を説明します。
具体的には、電気通信主任技術者から受験することをおすすめするかを「科目免除から見た場合」「合格率から見た場合」「参考書の出版数からみた場合」の3つの観点から説明します。
科目免除から見た場合
先に一級陸上無線技術士を取得した場合、電気通信主任技術者の科目免除は以下の通りとなります。
科目名 | 免除対象 |
電気通信システム | 免除 |
伝送交換設備(または線路設備)及び設備管理 | ー |
法規 | ー |
先に電気通信主任技術者を取得した場合、一級陸上無線技術士の科目免除は以下の通りとなります。
科目名 | 免除対象 |
無線工学の基礎 | 免除 |
無線工学A | 免除 |
無線工学B | ー |
法規 | ー |
科目合格数を見ると、科目数に大きな差がありますね。
これは、一昔前は電気通信主任技術者に専門科目があったため4科目で、電気通信システム科目と専門科目の2科目免除でした。
現在は専門科目は設備科目に統合されたため、1科目のみの免除となります。
また、電気通信システム科目は、一陸技よりも難易度が下がる試験である、工事担任者でも免除可能になります。
参考までに、こちらが私が工事担任者に合格した際の記事です。
そのため、無理をして一級陸上無線技術士に合格して電気通信主任技術者の科目免除を得る理由はないかと思います。
そのため、科目免除から見た場合は、先に電気通信主任技術者を受験してから一陸技を受験することをおすすめします。
合格率からみた場合
一級陸上無線技術士の合格率のざっくりとした平均は26.7%です。
一方、電気通信主任技術者の合格率のざっくりとした平均は、伝送交換26.7%、線路39%です。
以上より、電気通信主任技術者の方が合格率が高めに出ていることが分かります。
これは、問題の難易度と試験回数の差が関係しているように考えています。
実際に試験を受験してみた際の感覚や過去問を解いてみた際の感覚ですが、一級陸上無線技術士の無線工学Aは特に鬼門です。
ここ最近の無線工学Aは、過去問をやっておけば確実に合格できると言い難くなってきています。
それは、今までの過去問以外からも多々出題され始めている傾向にあるためだからです。
もちろん、電気通信主任技術者の設備科目も難しいですが、無線工学A程ではないと感じました。
更に一級陸上無線技術士は、試験が2日間実施されるため、とてもハードです。疲労が蓄積しやすく集中力が切れる状況下にあることは自明でしょう。
以上より、合格率からみた場合は、先に電気通信主任技術者を受験してから一陸技を受験することをおすすめします。
参考書の出版数からみた場合
電気通信主任技術者の参考書は、圧倒的に少なく、本当に数えるくらいしかありません。
逆に一陸技の参考書は、豊富に出版されており、好みのものを選べる状況にあります。
そのため、参考書の出版数からみた場合は、圧倒的に一級陸上無線技術士の方が勉強しやすいため、一級陸上無線技術士から先に受験することもおすすめと考えます。
ただし、こちらに関しては個人差があるかと思います。
まとめ
以上のとおり、免除される科目の難易度を考えると、圧倒的に電気通信主任技術者から受験することがおすすめできると私は考えます。
また、一級陸上無線技術士を2科目免除できると、1日あたり1科目受験とすることができるため、負担をかなり軽減できるメリットがあるものと考えます。
また、最も効率的なルートを考えるならば、工事担任者(総合通信)を取得し、電気通信主任技術者を1科目免除し、2科目のみとする。
その後、電気通信主任技術者を取得し、一級陸上無線技術士を受験するのが最も効率が良いと考えます。
一級陸上無線技術士から受験しようか、電気通信主任技術者から受験しようか悩んでいる方はぜひ電気通信主任技術者から受験してみてはいかがでしょうか?
最後に、工事担任者、電気通信主任技術者、一級陸上無線技術士に合格した際の記事はこちらにありますので、ぜひご覧下さい。
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